ダッチオーブンはキャンパーの誰もが一度は見聞きしたことがあるとは思いますが、実はいくつもの機能を兼ね備えたものであるということまで知っている人はどれほどいるでしょうか?
良さや性質を理解することで、より効率的に美味しい料理を作ることができますよ!
この記事では、あらゆる調理に対応できるダッチオーブンの便利な機能を一つ一つ紹介していきます。
ウォーターシール機能
家庭用の圧力鍋を使用したことがある方は、鍋本体に蓋をガッチリと固定した状態で使用するということはよく知っていることと思います。そして、ダッチオーブンの蓋が重いのは「蓋の重さで内部の気体を閉じ込めて圧力鍋状態にしている」とイメージしそうですが、実はそれだけではありません。
分かりづらいかもしれませんが、白く光っている部分が水分です。内部が沸騰して噴き出す直前になると、このように鍋と蓋の間に水分が溜まってきます。
食材を調理する過程で、鍋の中に水蒸気が発生し中に充満します。ダッチオーブン内部の圧力がどんどん上昇していくと、重量のある蓋であっても内部の圧力を抑えきれずに僅かに持ち上がるのですが、この時できる隙間から蒸気が出て行こうとするので隙間に多くの水分が集まることになります。そして内側の隙間全てに水分が付着していき、鍋と蓋の隙間を水分で埋めるという状況になります。
これをウォーターシールと言い、空気や蒸気のわずかな通り道を水分で塞ぐことで鍋の密閉性を高めることができるのです。
圧力機能
ウォーターシール機能により、密封性がより高まり内部の圧力が上昇することで圧力鍋としての性能を発揮できるようになります。とはいえ、ガッチリと蓋を固定しているわけではなく重さのみで抑えているので、家庭用の圧力鍋と比べると圧力の高さは正直なところそれほど高いものではありませんが、通常の鍋と比べると内部の圧力を上昇させることができ、正しく使うことで圧力調理の効果を得ることができます。
そのためには、内部が蒸気で満たされウォーターシールにより密閉された状態を維持する必要があります。正しい使い方としては沸騰させすぎないことが最大のポイント。
蓋と鍋の隙間から蒸気が噴き出し始めたら、熾火(おきび)で沸騰しない程度の温度を保って調理するようにしましょう。
上下からゆっくりと加熱。「オーブン調理」と一緒です。
余談ですが、僕が神様と崇拝している、かの有名なカーネル・サンダースはこのダッチオーブンで作ったフライドチキンの美味しさに目をつけたことがきっかけで、世界中で何十年も愛され続けているケンタッキーフライドチキンを生み出した。という話もあります。
予熱調理機能
ダッチオーブンやスキレットなどでよく聞く鋳鉄とは鉄に炭素を数%含む合金です。調理器具なので熱の伝わり方は非常に重要なポイントとなりますが、素材となる金属によってその数値は大きく異なります。キャンプで使用するクッカーのほとんどは、アルミニウム・ステンレス・鉄・鋳鉄のいずれかの素材を使用しています。この4種類で熱の伝わり方を比較してみました。
熱の伝わりやすさを数値化した熱伝導率。数値が高いほど熱が伝わりやすく、低いほど熱が伝わりづらいということになります。
素材名 | 熱伝導率(W/m K) |
アルミニウム | 236 |
鉄 | 90.9 |
ステンレス | 84 |
鋳鉄 | 48 |
4種類の金属の中では、ダントツでアルミニウムの数値が高く、次いで鉄>ステンレス>鋳鉄という順番です。鋳鉄でできているスキレットやダッチオーブンは他の調理器具と比べ、いかに熱伝導率が低いのかがわかると思います。
この熱の伝わりづらさのおかげで、調理時の熱が長時間保たれ、火から降ろしてもしばらくの間は高温のままを維持、肉や魚の芯の部分までゆっくりと火を通すことができるのです。
無油・無水調理法
蓋の重さやウォーターシール効果により、内部の水分や油分を外に逃さないため、蒸気となり鍋内部に充満しそのほとんどはとどまります。熱せられた水分を外に排出しすぎず、鍋内部に保持したまま食材を加熱することができ、水に溶けやすいとされるビタミンやミネラルなどの栄養素の流出も抑えられます。肉を熱した際は肉の油も鍋内部に大半はとどまるので、素材の旨味を限りなく逃さず美味しく調理することができます。
ダッチオーブンを使用しての調理では、焼き目をつけてそのまま蓋をし、焚き火などに遠火でセットしてしばらく放置する。というやり方が一般的ではありますが、この調理法の最大のポイントは蓋を開けないこと。内部に充満した気体も食材の調理に必要な要素なので、余計に蓋を開けてこの蒸気を外に逃してしまうと仕上がりが大きく変わってしまいます。早く確認したい気持ちをグッと堪えて、レシピ通りの調理時間を待つようにしましょう。
セルフベイスティングシステム
ダッチオーブンの蓋の内側に複数の突起がついたものを見たことがありますか?
近年発売されているダッチオーブンには付いていることも少なくなりましたが、古いモデルのダッチオーブンにはついていることがあります。この突起をセルフベイスティングシステムと言います。
ベイスティングとは、傾けたフライパンの奥の方に食材をおき、手前に溜まったオイルをスプーンでかけ続ける調理法があります。
これをベイストと言い、和食では照り焼きなどを作る際に行うかけ焼きと似た手法で、食材に火入れをしながら香り付けや適度に照りをつけたりする調理法です。
そして、この蓋の内側の突起がそのベイストの役割となります。
ダッチオーブン内部の水蒸気や油などが突起をきっかけに集まり、水滴となって下に落ちます。それがまた熱せられて上昇し同じように突起から水滴となり落ちる。これを加熱している間に延々と繰り返します。蓋の下には当然食材があるわけですから、出た水分や油などが落ちた時に食材にかかって、それがまた蓋から水滴として落ちてくる…。
このように、ダッチオーブンの中で常時自動的にベイストしている状態になるというわけです。
まとめ
いかがでしたか?
ダッチオーブンはただの黒い重い鍋というわけではなく、素材や形状にそれぞれ役割や機能が備えられた優秀な調理器具です。スマートに使いこなしてカッコよくそして美味しいキャンプ飯を楽しみましょう!