鋳鉄器具は熱伝導率が低く、全体的に均一に熱を伝えることができ、蓋の上に炭を置くことで上火も使うことができます。普通なら、別の鍋やオーブンを必要とする料理でも1つで全てこなす、汎用性の高い調理器具ですね。
コーティングが無いことでこのようにハードに使うことができるわけですが、それにはデメリットもあり、金属が酸に反応し溶け出してしまうということです。酸性の食材は多数ありますが、料理によく使用される酸性の強い食材として、代表的なものとしてはトマト・酢・ワイン・柑橘類などがあります。長時間煮込むような料理によく使われるので、料理に影響を与えやすいんです。
と、こういった認識が一般的なのですが
- 金属味の料理を食べてもいいの?
- 溶け出した鉄の人体への影響は?
- メンテナンスをすることでどうなるのか?
今回の記事ではこの辺を解説していきます。
鋳鉄は酸に反応しやすい
フライパンや鍋などの調理器具に使われる金属は、一般的には酸に反応するものとしないものの2種類に分類され鋳鉄は反応する金属になります。
酸性の食材を調理し鋳鉄が反応すると、少量の鉄分が溶け出し、料理が変色したり金属のような味がすることがあります。1つの料理を作る過程では溶け出す鉄分は少量であり、サプリメントや強化食材などでも摂取するような栄養素なのでそれ自体は食べても問題はありません。ですが金属味によりせっかくの味付けが変な味になることがあります。
また、シーズニングの仕方を誤ると部分的に錆が発生してしまったり、コーティングが剥がれてしまい、やり直しをしなければなりません。
しっかりとコーティングされ、定期的にメンテナンスを施していれば、この記事の内容は気にする必要もないのですが、加熱時の油通しのやり方1つでもノンコーティングのスキレットを普通に使用することもできるので、使い方としてこれが全てというわけではありません。1つの使い方として参考にしていただければと思います。
シーズニングの重要性
正しいメンテナンス(シーズニング)ができていない事により、食材が金属に触れることで反応するということが原因です。
しっかりとしたコーティングが形成されていると錆びつきを防ぐこともできます。「錆び付かない=空気や水分に触れていない」ということになります。酸性の食材と鋳鉄そのものが触れることもなくなるというわけですね。
↓こちらの記事でメンテナンスに関して解説しています。
ただし、コーティングは洗浄時や何度も加熱と冷却を繰り返したり、調理時にヘラや箸などで擦れることでことで少しずつ劣化して剥がれることもあるので、コーティング面が形成されたからといってそれだけで永遠に使えるというわけではありません。
酸性の食材
鉄に反応しやすい酸性の食材として主なものには、トマト・酢・ワイン・レモン汁などが挙げられます。
他にも酸性の食材は色々ありますが、これらを使用した料理は比較的煮込んだりするものが多いので、しっかりとコーティングが施された状態でなければ使用を極力控えた方が良いでしょう。
温めに2分程度くらいであればさほど影響はありませんが、時間がかかるほど溶け出す量は増えていきます。ダッチオーブンを使った煮込み料理ということであれば、30分〜1時間もしくはそれ以上の時間をかけますよね。煮込んで食材を柔らかくしようとすればするほど、鉄分が溶け出してきて味や色の変化など影響は大きくなっていきます。
溶け出した鉄分
溶け出した鉄分を摂取しても人体に影響が出るほどのことはありません。
例として『南部鉄器を使用するとどれくらいの鉄が溶け出すのか』という実験では、600mlの水で約4人分の味噌汁を作ると1mg程度の鉄分が溶け出すという結果になります。4人で分けたとすると1人前あたり0.25mgという計算になりますね。
*味噌は酸性の食材
鉄の食事摂取基準(mg/1日)
耐用上限量
年齢 | 男性 | 女性 |
〜1歳 | ー | ー |
〜2歳 | 25 | 20 |
〜5歳 | 25 | 25 |
〜7歳 | 30 | 30 |
〜9歳 | 35 | 35 |
〜11歳 | 35 | 35 |
〜14歳 | 40 | 40 |
〜17歳 | 50 | 40 |
〜29歳 | 50 | 40 |
〜49歳 | 50 | 40 |
〜64歳 | 50 | 40 |
〜74歳 | 50 | 40 |
75歳〜 | 50 | 40 |
摂取推奨量
年齢 | 男性 | 女性 |
~5ヶ月 | ー | ー |
〜1歳 | 5.0 | 4.5 |
〜2歳 | 4.5 | 4.5 |
〜5歳 | 5.5 | 5.5 |
〜7歳 | 5.5 | 5.5 |
〜9歳 | 7.0 | 7.5 |
〜11歳 | 8.5 | 8.5(12.0) |
〜14歳 | 10.0 | 8.5(12.0) |
〜17歳 | 10.0 | 7.0(10.5) |
〜29歳 | 7.5 | 6.5(10.5) |
〜49歳 | 7.5 | 6.5(10.5) |
〜64歳 | 7.5 | 6.5(11.0) |
〜74歳 | 7.5 | 6.0 |
75歳〜 | 7.0 | 6.0 |
*女性()内は月経ありの場合
先ほどの味噌汁の例は、鉄が溶け出しやすい鋳鉄器具を使用した時の数値となります。
サプリメントの多用、鉄製器具を常に使用する、鉄分の多い食材を食べ続けるなど、いつも通りの食事ではよほど大量に食べない限りは、過剰摂取にはなることはなることはないと言われています。(体質もありますので一概には言えませんが)
少し話はそれましたが、わかりやすくするために数値で説明させていただきました。
要するに何が言いたいのかというと、コーティングやメンテナンスを怠ったり失敗していたとしても心配するほどのことではないということです。
適切な保存方法
言わずとも知れたことだとは思いますが、洗浄後はしっかりと乾燥させてから保管するということが大切です。
焚き火や炭火またはコンロなどで、大きさにもよりますが3分程度火にかけておけば熱が全体に回って水分が飛びます。触れる程度まで温度が下がってから保管するようにしましょう。自然乾燥はNGです。
キッチンで壁などにかけておいたり、木製の食器棚などでも良いでしょう。シンク下の収納スペースなどは湿気がこもりやすいので控えてください。空気中の湿気が日本よりも少ない本家アメリカでさえ、水分に注意して保管しているようなものですので、日本で気をつけるのも至極当然のことですよね。新聞紙で包んでおく方法はシンプルですがとても効果的です。
正しく使用する
適切にコーティングされていれば鉄分の影響はほぼありません。コーティングを保つために年に3〜4回はシーズニングを行いましょう。毎月キャンプに行ってその都度使っているという事であればその限りではありません。
めんどくさいと思うかも知れませんが、家庭で使っているテフロンのフライパンなども長く使おうとすれば気をつけることは色々あります。
煙が出るまでの予熱はしない、調理直後の熱々の状態で洗わない、フライパンより外側に漏れるほどの火力で調理しない、など。
テフロンのフライパンに合わせた正しい使い方をしようとすれば、実は色々気をつけなければならないことはあります。鋳鉄の器具に関しても、性質に合わせて正しい使い方をするというのはそれほど手間なことでもないと思いますね。
まとめ
今回は、スキレットやダッチオーブンなどの鋳鉄器具と酸性食材の調理について解説しました。
- 鉄分は食べても問題は無い
- 鉄分はむしろ必要な栄養素の一つ
- シーズニングで味や色の変化を防ぐ
酸性食材を使ってはダメというわけではありません。細かいことは気にせずいろんな料理に使っていきましょう!
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